自由な場所と逃げたい私

適応障害とか言われてる20歳女子の精神病棟入院記。10月20日退院。

天秤。体重と言葉

病棟に十代の子達が多かった頃には、過食だの拒食だのという言葉をよく耳にしていました。私を初めて見た大半の患者さんは、言いづらそうに「拒食で入院してるの?」と聞いてきます。もしくは、私の友達に「あの子拒食?」と聞くらしかったです。否定すると、驚かれます。まあ、160cm40kgでは拒食体型に見えても仕方ないのでしょうか。痩せたくて痩せたわけじゃないと言えば嘘になりますが、自分で努力したのは3kg程度。東京と地元で抑鬱状態のときに5kg。入院して病院食になってから知らぬ間に2kg。高校時代には50kg前後をキープしていたので、計10kgくらいは減ってしまったのです。看護師さんからも「あと5kgは太ろうね」と言われてしまいました。その時です。5kg、という言葉が急に恐ろしくなりました。そんなに体重が増えてしまったら、私じゃなくなる!「そうですねー、増やしたいんですけどねー」なんて口では言いつつ、軽いパニックを起こしていました。45kg?BMIは?痩せ型なの?いやだ!それまで考えてもいなかった体重への執着が、溢れだしました。食べることは怖くないのに、体重が増えることが恐ろしいのです。私はナースステーションの目の前にあるランニングマシンで毎日、時速6kmで30分間走るようになりました。学生時代には大嫌いだった持久走を自分からやるようになったのです。走り終わると安心しました。しかし、走るようになって3日、いつも通り走る私に看護師さんが近づいてきます。「ダイエットですか?それ以上痩せてどうするんですか?」「どうするって・・・」看護師さんの手が静かにランニングマシンの速度を落としていきます。「あの・・・」「今の体重から1kgでも減ると、僕らはあなたに拒食症のかたと同じような措置をしなければならなくなるかもしれないんです。僕は、そんなことをしたくない」ランニングマシンが止まりました。看護師さんが私の目を覗き込みます。体力作りをしたい、だとかそんな言い訳を述べることもできました。でも、私はあっさりと彼に説き伏せられてしまいました。点滴でも高カロリージュースでもなんでもやってみろ、という心境でしたが、私を心配してくれているという看護師さんの気持ちに心を動かされてしまいました。そして彼も、私に対して体重を増やそうね、とは一言も言いませんでした。こうして、私は不健康な運動をやめました。この一件以来、その看護師さんには何でも話せるようになりました。

精神病棟への入院とは、もともと持っている障害の他にも、近しい患者さんの影響で新たな障害を患う危険もあるということを知りました。私のように運良く止めてもらえる場合もありますが、仲の良い患者さん同士が互いの障害に影響されてしまい、病状が悪化するケースも少なくない、とつい最近聞かされました。