死にたいあの子
久々に死にたいです。ああ、久しぶり。きっかけと呼べるものは、取るに足らないような、もはや自分で説明できないようなものです。せっかく入院生活では落ち着いていたのに。どうしたものでしょうか。
鏡よ、鏡。私を助けて
どうしたものでしょうか。やはり私は、食べることは怖くないのに、体重が増えることが非常に恐ろしいのです。周りに拒食の人や食事制限をかけられている人もいません。最近は体重を増やそうね、とも言われていません。それなのに、です。外泊したとき、ディナーはイタリアンレストランのカルボナーラで、その次の日は朝を食べずに昼間にとんかつを食べました。久々に高カロリーなものを食べました。そのときは、「私太ってないし、好きなものを好きなだけ食べていいよね」という具合で、健康的に食事ができたのです。
ただいま、かわいい私。
入院して初めての外泊が終わりました。ひとりで挑むには、あまりにリスキーだと思ったので同じ病棟の友達(一回り以上は年上ですが)の同伴で実家に帰りました。西の果てのさらに西の果てにある実家周辺は、それなりに栄えています。
綺麗な手。初めての赤。
入院してから1ヶ月半ほどが経とうとしていますが、長年治らなかった癖がいつの間にか、あっさりと消えました。
天秤。体重と言葉
病棟に十代の子達が多かった頃には、過食だの拒食だのという言葉をよく耳にしていました。私を初めて見た大半の患者さんは、言いづらそうに「拒食で入院してるの?」と聞いてきます。もしくは、私の友達に「あの子拒食?」と聞くらしかったです。否定すると、驚かれます。まあ、160cm40kgでは拒食体型に見えても仕方ないのでしょうか。痩せたくて痩せたわけじゃないと言えば嘘になりますが、自分で努力したのは3kg程度。東京と地元で抑鬱状態のときに5kg。入院して病院食になってから知らぬ間に2kg。高校時代には50kg前後をキープしていたので、計10kgくらいは減ってしまったのです。看護師さんからも「あと5kgは太ろうね」と言われてしまいました。その時です。5kg、という言葉が急に恐ろしくなりました。そんなに体重が増えてしまったら、私じゃなくなる!「そうですねー、増やしたいんですけどねー」なんて口では言いつつ、軽いパニックを起こしていました。45kg?BMIは?痩せ型なの?いやだ!それまで考えてもいなかった体重への執着が、溢れだしました。食べることは怖くないのに、体重が増えることが恐ろしいのです。私はナースステーションの目の前にあるランニングマシンで毎日、時速6kmで30分間走るようになりました。学生時代には大嫌いだった持久走を自分からやるようになったのです。走り終わると安心しました。しかし、走るようになって3日、いつも通り走る私に看護師さんが近づいてきます。「ダイエットですか?それ以上痩せてどうするんですか?」「どうするって・・・」看護師さんの手が静かにランニングマシンの速度を落としていきます。「あの・・・」「今の体重から1kgでも減ると、僕らはあなたに拒食症のかたと同じような措置をしなければならなくなるかもしれないんです。僕は、そんなことをしたくない」ランニングマシンが止まりました。看護師さんが私の目を覗き込みます。体力作りをしたい、だとかそんな言い訳を述べることもできました。でも、私はあっさりと彼に説き伏せられてしまいました。点滴でも高カロリージュースでもなんでもやってみろ、という心境でしたが、私を心配してくれているという看護師さんの気持ちに心を動かされてしまいました。そして彼も、私に対して体重を増やそうね、とは一言も言いませんでした。こうして、私は不健康な運動をやめました。この一件以来、その看護師さんには何でも話せるようになりました。